【名古屋アートレビュー】第83回−絵画と写真の交差 ― 印象派誕生の軌跡
2009年10月24日(土)〜12月20日(日)、名古屋市美術館にて開催中の絵画と写真の交差 ― 印象派誕生の軌跡を見てきました。
今回は絵画と写真です。考えてみると「写真」という手法が生まれる前は、見えるものを記録する技術は絵画のみ。長い間、絵画は人、物、物語を表現する、記録する分野で中心的役割を担っていました。そこへ「写真」の登場です。その時、絵画と写真の間に何が起こったのか−そんな展覧会です。ね、ワクワクしてきませんか?
写真の誕生から170年。展覧会は貴重なタルボットやダゲールなど写真草創期の写真作品と、同じ頃に描かれた絵画から始まります。精密に書かれた風景画や人物像と、時間をかけて撮られ、ゆっくりやかれた写真に、同じような印象を受けます。それまで何週間から何ヶ月と時間をかけて画家達が仕上げていた風景を、短い時間で紙に残せる写真。当時の画家はさぞ、驚嘆したことでしょう。写真に仕事をとられるかもしれないと不安におののき、これまでの絵画の限界をも感じたかもしれません。そこで、彼らは絵画としての表現を追及していくこととなりました。それに影響を受け写真も記録としての写真ではなく、表現としての写真の道を歩もうとするのです。
面白いことに、絵画は光の分解を、写真は光からの別離を、それぞれ追求したのです。パッと聞くと本来なら絵画が光からの別離で、写真が光の分解なのでは?と思うかもしれません。しかし、絵画が光の分解−すなわち、目で見たまま表現するのではなく、描くものを分解して残った印象、心象を表現するようになったのです。ここに印象派が産声を上げました。マネやモネ、ドガといった巨匠たちの誕生には、写真の存在が欠かせないものだったのです。
そして写真も。光からの別離をはじめます。写真は光がなくては撮影できないものですが、写真の中に立ち上るような、ひっそりと寄り添うような「影」の存在が大きくなっていきます。私たちの目は風景を均一に見ているのではなく、自然に興味のあるもの、見たいものにフォーカスしています。機械である写真で、人の目のように表現したいもの、撮影したいものにフォーカスし、写真を絵画のように仕上げる。絵画の影響を受け、ピクトリアリズムと呼ばれる写真が誕生しました。
写真の誕生以来、絵画と写真は時には寄り添い、時に反発しながら、互いに影響しあい、互いに独自の表現を追い求め、それぞれの芸術を深化させていきました。その流れをつぶさに見られる展覧会は、非常に貴重な機会です。この時代、絵画と写真が切磋琢磨したおかげで、私たちはアート作品からだけでなく、ポスターや雑誌の中で様々な表現を楽しむことができているのだと思います。
名古屋市美術館 学芸員さんよりひと言
絵画と写真が出会い、ハネムーンとも言える蜜月の時代を経て、お互いの道を行くまでの展示になっています。写真が誕生してから、いかに絵画が風景を伝えようとしたか、理想の風景、理想の肖像を写真がどう表現しようとしたか、そこが見物ですよ!
展示作品
ウィリアム・ヘンリーフォックス・タルボット《村の人々》
エドゥアール・マネ《猫と花》
他
開催期間/会場
絵画と写真の交差 ― 印象派誕生の軌跡
2009年10月24日(土)〜12月20日(日)
9:30-17:00 金曜日は20:00まで(祝日にあたる場合は除く)
※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、年末年始(12月21日〜1月8日)
観覧料:一般1,200円(1,000円)、高校・大学生800円(600円)、小・中学生500円(300円)*( )内は前売り及び団体料金
*身体等に障害のある方、および付き添いの方には割引制度があります。手帳をご持参のうえ窓口にてお問い合わせください。
*名古屋市交通局の「ユリカ」「一日乗車券」「ドニチエコきっぷ」を来館当日に利用された方は、100円割引となります。
*「当館HPの割引券」等の提示で100円割引制度があります。
WEB:名古屋市美術館
〒460-0008
愛知県名古屋市中区栄二丁目17番25号(白川公園内)
【taxt by ひなお】
【photo by fukuko】
名古屋で行われるアートを徹底レビュー
最新の名古屋アートレビューは「
名古屋アートレビューアーカイブス
」
※本記事に使用されている写真内の作品の著作権は作家自身に帰属します。画像の使用、他に掲載、転載する場合は必ずご本人に許可を受けてください。

名古屋アートライフ at








