【映画レビュー】番外編 坂井真紀の魅力満載の大吉映画「ノン子36歳(家事手伝い)」監督インタビュー
今回は特別編として、今話題にもなっていて以前に名古屋ムービーニュースとして取り上げました、三十路女の青春恋愛ムービー「ノン子36歳(家事手伝い)」の熊切監督にインタビューすることが出来ましたので、ボリューム満点でレポートしたいと思います。
先日「名古屋ムービーニュース」でもお伝えした「ノン子36歳(家事手伝い)」ですが、三十路女の青春恋愛ムービーということで、その魅力や、製作コンセプトなど監督本人に伺って来ましたのでレポートしたいと思います。
ノン子36歳(家事手伝い)監督インタビュー
■・ これまでは男性を主人公にしてきた作品が多かったですが、今回女性を主人公にしたこの作品を撮ろうと思ったきっかけは何ですか?
坂井真紀さんとの出会いが大きいです。以前『青春☆金属バット』と『フリージア』という作品に出てもらったときに、撮れば撮る程面白い人だなと思いました。過去の作品ではキャラクターを演じてもらったのですが、もっとリアルな人間を坂井さんにやって欲しいという思いがずっとあって、ちょうど『青春金属バット』と同じプロデューサーから坂井さんで何かやってもらえないかなという声をかけられたんです。待ってましたという感じでした。実は昔かいた短いプロットを書き直したものを坂井さんに読んでもらって坂井さんが「是非やりたい」といってくれたことで(この作品が)動き出した感じです。脚本の段階では完全に当て書きで書いています。
■世間的に言われるところの「駄目オンナ」という題材を敢えて選んだ理由は何ですか?
基本的には立派な人には全く興味が湧かなくて、逆に嫌われ者とか悪役とか性格の悪い奴にどうも「根はいい奴なんじゃないか」と惹かれるんです。「(家事手伝い)」は括弧をつけたことにすごく意味があって。実はノン子は家事手伝いをしていないんですよね。いうなれば家事手伝い、みたいなニュアンスなんです。結局やりたかったのは、若干排他的な匂いがする街での嫌われ者に寄り添う、ということで、誰も光を当てないような所に光を当てたい、身近にいそうだけれど映画の題材になりそうにないところを撮りたいと思ったらこういう人の話になりました。
■リアルな30代の女性の姿が描かれていますが、どのようにそれを追求したのでしょうか?
実を言うと最初はかなり男目線だったのです。マサル目線というか、年上の女性に対する少年の妄想というか・・・。でもノン子を主人公にしようとしてからは、自分の同級生だったり、よく知っている女の人の中に結構近い人がいるので、あの人は普段どうしているのかなあと重ねるというのはありましたね。例えば、ちょっと昔好きだった人とかを重ねるとすごく愛情が湧くんです。なんとかしたくなる、というか。ノン子はなんとなく身近にいそうな人を笑わしてあげたいという気持ちで撮ったというか。

■36歳にこだわった理由は?
よく、「アラフォーとかアラサーとか言われているのでそういうのじゃないところを狙ったのですか?」と言われるのですが、実はそんなに意味がなくて(笑)。ゴロがいいな、とか文字の3と6のデザインがいいな、とか。最初は『ヒヨコ狂想曲』とか『ヒヨコ』というタイトルで動いていたんですが、坂井さんに「何かいいタイトルはないですか」と聞いてみたところ、ギャグで「『アイコ十六歳』にかけて『ノン子36歳』」と言われて、それがどこかで引っかかっていました。脚本家の宇治田さんと「(家事手伝い)ってつけたら新しくない?」という話になり、最終的にそれ以上にいいタイトルが見つからず、それで通すことになりました。
■この作品を観て欲しいターゲット層への意識というのはありますか?
正直そういうことはあまり考えていないのですが、女版『レイジング・ブル』を作りたいという思いはありました。あの作品は男がみるとザワザワするというか、恥ずかしくなるんですね。自分の恥ずかしいところを見せつけられるような、焦りというか、かき乱されるというか、喜怒哀楽じゃないところの感情なんですよね。そういう意味で、ノン子と同じくらいの年齢の女性がこの作品を観たらどう思うのかということには興味があります。男の人が観ても、マサルの少年の目線があるので、また違う感想なのかなあと思いますけれど。
■坂井真紀さんを「映画的な面白さを感じる女優さん」とおっしゃていますが?
坂井さんは現場で本当に信頼してくれていました。テレビ的な方だと綺麗に映りたがったりとかいうのがあると思うのですが、坂井さんは監督がOKならOKというスタンスで、絶対にモニターを観ないんです。これは(監督として)すごく仕事をしやすいですし、そうなるとこちらも完全に責任をもって絶対にいい顔を撮ってやろうと思います。それから、坂井さんはすごく綺麗な方だと思いますが、何ともない街でも馴染む人だなあとも思いますね。
■坂井真紀さんはどのように役作りをされたのでしょうか?
場合によると思います。『金属バット』の時は極端なキャラだったので、キャラをつくりこむ感じで、『フリージア』も割とそうだったと思います。すごく集中力がある人なので、入り込むと瞬きをしなくなるんですよ。けれどそうじゃない事を今回はやりたくて、自然に瞬きもするというスタンスでやって欲しいと思っていました。色々話はしましたが、微妙なところというのは理屈で作れるところではなかったですね。最初は坂井さんも「(ノン子は)どの程度芸能界に執着があるのか」とかを聞いてきたのですが、僕は「ない」って全部否定してきたんですね。ノン子は多分考えた事を諦めた人なんかな、って思っていて。だから(役作りは)すごく難しかったと思いますが、何も考えないでそこにいようという感じでやられたのだと思います。あとはその場の雰囲気と、ノン子はどんな微妙なところに喜びを感じるのか、感じないのか、とか、そういうことは考えていたみたいです。
坂井さんは理屈より肉体感覚で役を掴む人なので、僕が話すとイメージを掴んで、そこから先ずちょっとやってみる。それを僕が観てみるという感じですね。撮影初日のファーストカットがノン子が家から神社までふらふら煙草を吸いながら歩くというシーンだったのですが、あれがノン子のペースだなって思っていたので、それを何回も撮りました。その間に坂井さんもノン子の歩きを掴んで来たと思いますね。便所下駄のカランコロンという音も結構狙いだったのですが、ノン子がサイズの大きい下駄をちょっと引きずるというのが独特の音になって、ああこれだなあという感じに段々なっていきましたね。

■ベッドシーンなど過激なシーンもありますが、坂井さんは作品への出演をすぐに受けてくださったのでしょうか。
坂井さんは僕の『揮発性の女』とかも好きみたいで、いつか僕のオリジナル作品に出たいと言ってくれていたんです。(ノン子については)世界観というか、チクチクくるような感じはあったが、是非やりたいといってくれましたね。性的部分を描くというところに対しても挑戦といえば挑戦だったと思います。ちょうど坂井さんにプロットを渡すちょっと前にロマンポルノの回顧上映というのをやっていて、たまたま僕も坂井さんもそれを観ていたんです。それには人のどうしようもなさが描かれていて・・・ああいう匂いのする映画って少なくなったなって思っているのですが、そういう感覚をすごく分ってくれる人だったので受け入れてもらえたのかなと思っています。
■出演者の方それぞれが個性的でとてもいい味を出していますよね。
キャスティングには大満足です。新田(恵利)さんとか良かったですよ。ノン子も(新田さんの演じた)富士子も、どっちもすさんだ人なんですが、あの役は中々決まらなかったんです。。その時に新田さんが仕事に復帰したということを聞き、その宣材写真をみてピンときました。絶対ノン子とかぶらないし。
■マサル役の星野源さんについては?
『69 sixty nine』という作品に出ていて、仲の良い役者から彼は面白いという噂を聞いていました。最初に意識したのは、今回音楽を担当している赤犬と星野さんの所属するSAKEROCKというバンドがタイバンを組んでライブをやっているのを観て、ギターを弾いている姿を素敵だと思いました。『69』では何の役をやっていたのかと思って後で確認したら、校長室でウンコをする役だった。で、そのギャップに衝撃を受けて、気になっていました。最終的に源くんにした一番の理由は源くんだと重くならない気がしたからなんです。星野源くんて本当にいい奴なんで、いい人オーラがあれば、必死になればなるほど笑えるような気がしました。(マサルは)根はいい奴というのを感じさせたかったのでいいなあと。あと、笑顔がとても素敵なことも理由ですね。

■監督にとって一番こだわりのシーンは?気に入っているシーンは?
こだわりは常にありますが。便所下駄のカランコロンの音にマサルがついて行くイメージとかは特にそうですね。うちの母親が便所下駄をはいていて、昔家で飼っていた猫が、かあちゃんの下駄の音を聞いてついていく姿が印象に残っていました。マサルは捨て猫か捨て犬のようなイメージなので、それを使いました。 全体的にどのシーンも気に入っているのですが、意外に思われるかもしれませんが、花畑のシーンは、今までそんなことをやった事はなかったんですけれど、意外とやってみたかったんです。映画ならではの高まりというか。気合いも入れていたし、撮っていても楽しかったし・・・好きなシーンですね。
■ヒヨコが印象的ですが、作品を作るに当たってヒヨコを登場させることのこだわりはあったのですか?
ヒヨコを出す事は最初から構想にありました。うちの親父が小学校の時に市民バザーみたいのでヒヨコを売ったことがありまして。その経験をネタにしています。(マサルが)突拍子もないことをやろうとしている、という設定にちょうどうまくはまったという感じですね。
■撮影に使ったヒヨコはその後どうなったのですか?
意外と聞かれるんですが(笑)。大学の某施設に引き取られています。
■セックスシーンは女性目線からみてもリアルだと思いますがどう撮られたのですか?
(あのシーンを)文字にするとエロ小説になります(笑)。でも役者の肉体で作っていくと、違和感なくああいうしっくりくるものになりました。いかにもベッドシーンみたいな撮り方は絶対いやだったので、もっとみっともないところがあったりするところも含めて撮りました。ノン子が煙草を吸ったりメシを喰ったりと同列に性の部分も普通に描くという事をやりたかったです。
「人生捨てたもんじゃないかも」と前向きな余韻が残る「大吉映画(フォーチューン・ムービー)」。監督のインタビューから作品をより一層楽しむためのヒントを沢山いただけたような気がします。『ノン子36歳(家事手伝い)』は2月7日(土)から名古屋シネマテークにて公開されます。是非劇場でお楽しみください。
【予告】
【名古屋で上映中の映画館】
【映画館】名古屋シネマテーク
【所在地】愛知県名古屋市千種区今池1-6-13今池スタービル2F
【電話】052-733-3959
【上映時間】こちらより※2009年2月7日公開
【休業日】なし
※地図情報はこちらから
【関連サイト】
「ノン子36歳(家事手伝い)」公式HP
名古屋シネマテーク
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